カテゴリー「文化・芸術」の5件の記事

『郵便屋さん、ちょっと』

 劇作家のつかこうへい氏が10日に逝去した。

 高校時代、演劇部で芝居に明け暮れていた頃は、まさにつかこうへいブームの最中。『出発』『郵便屋さん、ちょっと』etc…。当時はその展開の奇抜さや台詞の面白さ、回転の早さが魅力的で、大会の演目として毎回候補に挙げるのだが、演劇部の顧問から「長い」「部分的に上演しても意味がない」と却下されていた。
 「でも、他の高校は、台本はしょって演ってるじゃないねぇ…」
陰で文句も言ったものだ。

 つか作品の根底にある深い想いや人生のペーソスまで心が届かず、ティーンエイジャーの手に余るのだと、今は思えるけれど。

 ―先に逝くものは、後に残る人を煩わせてはならないと思っていますー
最期の名台詞

 演劇少女時代を彩ってくれたつかこうへいさん。
 どうもありがとうございました。
 ゆっくりおやすみください。

(7月13日記)

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15年目も FUNK & ROCK !!

 スガシカオのライブ『FUNKASTICK』は煌めく光と爽快な風に溢れていた!

 80年代のディスコ(決して「クラブ」ではない)を思わせる鮮やかな光が交錯する中、パンチの利いたギターが奏でるメロディーと、塩辛声が紡ぐ独特の世界。心にも身体にもしっかり響くサウンドは、根底に流れている FUNK & ROCK を同世代として共有しているせいだろうか。

 スガシカオはデビュー13年。
 この間、アルバムを13枚年リリース、つまり毎年発表し、そのすべてがアルバムチャートのTOP 10入りを果たすと言う日本記録を樹立している。

13年もやってくると、周りも本人も、毎年出さなくてもいいんじゃない?という雰囲気になりがちだけど、アルバムを聴いてライブに来てくれるファンのためにも毎年出し続けたい」
「今、音楽業界位は低迷していて、CDは売れないし、ダウンロードし放題の無法地帯、お金を出して買うもんじゃないような風潮になっている。売れているCDも、カバーアルバムだったり、懐かしの音楽だったり。それが悪いとは言わないけれど…。売らなきゃいけないから、「保守で行こうよ」と言う人もいる。でも、アーティストが保守になったら、FUNKでもROCKでも無いんだよ。俺たちアーティストはオリジナルを発信していかなきゃいけないんだ」

 そしてアーティスト13年目の彼はこう言い切った。
15年目もFUNKROCK !!

 惚れなおした。

 POPS界で不動の地位を築いても、甘んじず、初心を貫く。
その業界で長くなればなるほど、良くも悪くもブレーン(あるいはご意見番)が増えて軌道がずれてくるものだが、おそらく自分の気持ちに正直に好きな道を極め、これからも全うしようと考えているのだろう。
―自分の選んだFUNK & ROCKを貫きたい―
それをさらっと言ってのける潔さに、彼のアーティストとしての果てしない力量を感じた。

 ミラーボールの光が流れる中、周りを見渡すと、結構年齢層が高い。同年代の40代と思しきファンもいるし、3階席と言うこともあり、座ってサウンドを楽しむのみの人もちらほら。

 私は。
もちろん、ステップを踏み、見よう見まねながら振付もしっかり、身と心で音楽を受け止めた。
終演後の表参道の湿った風すら爽快に感じたスガシカオ・ナイト!
0701funkastic
72日記 途中コメントは71NHKホールのコンサートにて)

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今年の夢―アリスの夢

新春は「初夢」「今年の夢」など
「夢」(=目標)を口にすることが多い。

注目している新鋭のピアニスト、アリス=紗良・オットが
新年早々ニューアルバムをリリースした。

デビューから2年目にして3枚目のアルバムを発表、
しかも今回はミュンヘン・フィルとの共演という
6歳の頃からの「夢」を実現させたアルバムだ。

 デビューアルバムではリスト、
セカンドアルバムではショパンと、
代表的なピアノ曲のソロを披露し、
若さほとばしるタッチと眩暈を伴うテクニックで存在感を示したアリス。
今回は、力強く華やかなアリスの演奏がオーケストラと融合し、
夢の舞台でピアノに向かえた歓喜と高揚も伝わってくるようだ。

セッション録音の演奏も、清涼さに満ちた魅力ある調べ。

 実は、
寒いから外出したくない、、、とネットで購入しようとしたら、
楽天ブックスでは既に売り切れ!
 せっかくだからと銀座の山野楽器に行ってみたら…。
クラッシック階の入り口に「アリス」コーナーが出来ていて、
すでに試聴客が…。
それも、いかにもなクラッシックマニア風ではなく
会社帰りのビジネスマン風の男性で、熱心に聴き入っている。

半年前に演奏を聴いたとき、その才能に圧倒され、
それ以上に、
20
歳そこそこと思えぬ音楽や人生に対しての真摯な言葉に
感動したのだが、
まさかこれほど速くブレイクするとは思わなかった。

現代は「夢」を語りにくい時代になっている。
大きな夢を掲げたら、呆れられかねない風潮すらある。
でも、未来ある人たちには
大きな夢を掲げて欲しいし、それを叶えるため進んでほしい。
高いハードルを越える精神力をつけて欲しい。
他面で、それを後押しできる世の中を願いたい。
歳を重ねるごとに堅実になるとは思うけれど…。
社会全体のエネルギーが収縮する中、
理想論と言われようが、小さくまとまってほしくない、と思う。
100108alice_2 
さて
アリスの三枚目のCDの色は深紅。
これはプロモーションの映像で着ているドレス同様
アリスのイメージカラーなのだろうか?
個人的には、ブルーのドレスが
等身大のアリスの、水をはじくような煌めきと、
アイデンティティに惑う彼女の黒髪・栗色の瞳に映えて
より美しいと思うのだけれど。

18日記 写真 3枚目のアルバム「ピアノ協奏曲第一番」)

アリス=紗良・オット オフィシャルサイト(日本語ページあり)
http://www.alice-sara-ott.com/sites/japanese/home.html#



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『外郎売』(ういろううり)


 演劇や朗読、各種アナウンスなど、日本語の表現に関わる人たちが練習のために必ず学ぶ早口言葉。そのほとんどは、歌舞伎の『外郎売』(ういろううり)から抜粋したもの。
 中学時代に演劇部に所属して以来、『外郎売』は口の体操の基本、高校時代は『外郎売』を各自演出して発表し合う、なんていう練習もしたような。早口言葉のみならず、長台詞として意味を取りながらの息継ぎも重要。掛け言葉や日本語独特の表現、音やリズムの面白さがふんだんに盛り込まれ、滑らかに口をついて出るようになると、その節回しが心地よい
 その慣れ親しんだ『外郎売』を、市川團十郎が演じると言うので、本物を絶対に聴き逃してはなるものかと国立劇場に駆けつけた。

 今回の『外郎売』は、市川團十郎が壮絶な闘病生活を経て2006年に復帰公演で演じて以来の披露。『外郎売』は市川團十郎のお家芸。滑らかに謳いあげて当たり前の演目に向き合い、名調子を取り戻す稽古を重ねる心境はいかばかりだったか。
 NHKのニュース特集では、團十郎が「武具馬具武具馬具、三武具馬具--」のくだりを上手くこなせずつかえてしまう様子を放送していた。役者としては、台詞を噛んでいるところを人様に見せたくないだろうに…。あえて撮影させたのは、頑張っている姿を示すことにより闘病している人の励みになれば、という取材のテーマに沿ったものなのだろうか。

 さて舞台。
團十郎は、力強い声で、「うゐろう」がどんなに素晴らしい薬か、
その効用を説明しはじめた。
 正直、びっくりする速さでまくしたてるわけではない。
だが、一音一音が粒立ち、はっきりと発せられている。
そして、「武具馬具…」のくだりも滑らかに。
会場からは拍手が沸いていた。

*+*+*+*
Uiro1114
 パンフレットのほかに台本も買い、
帰宅早々、猫を相手に口上を読みあげてみた。

初見。
読み方を忘れている漢字や若干異なる言い回しもあり、何度か中断。
2回目。
勘が戻ってきたか、文字を眼で追わなくても言葉が出てくる。
3回目。
やや噛みながらも口上らしく節を付けてみる。

 久しぶりだから息継ぎが苦しいけれど、
5回目ぐらいで何とか形になったもよう。

これなら、まだ外郎売から「うゐろう」を買わなくても良さそうだ。

(聴衆のステラから、にゃーん、の掛け声!)

1113日記 写真は台本と、『外郎売』掲載の筆者のかつての練習本)
(1月3日誤字訂正 猫を相手に向上を→…口上を)

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「末永く音楽に向き合いたい」~アリス=紗良・オット

8月8日。末広がりの日に、あなたの人生のヒントになればと20歳のピアニストの煌めく言葉をご紹介したい。Photo

6月のある夕べ、新鋭のピアニスト、アリス=紗良・オットの素晴らしい演奏を聴いた。

この日はショパンの名曲を中心にしたプログラム。

小犬のワルツ、華麗なる大円舞曲まで馴染みのあるメロディーが、時に軽やかに、そして力強く奏でられてゆく。

目を見張るのはそのテクニック。

ミツバチの羽ばたきを思わせるような細やかな指づかいはピアノを演奏したことがある人なら羨望のまなざしで溜息を洩らすだろう…。

あれほど速く鍵盤をたたいていながら一音一音が粒だっている。

渓谷の岩肌を勢いよくほとばしる清水のしぶきのような清涼さ。

ドイツ人の父と日本人の母を持つアリスは、3歳の時にピアノの演奏会を聴いて自分もピアノを習いたいと意思表示したが母親は大反対し、アリスがピアノを弾かないようピアノの周りに絵本のバリケードを築いたそう。それでも母の目を盗んではピアノに触れ、一年後にようやくピアノを習うことを承諾されたのだという。

5歳でコンクールに初入賞後、数々の国際コンクールのタイトルを総なめ、、国際音楽祭ではゲスト演奏し、現在はザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学でキャリアを積んでいる。

モデルのように手足が長くすらりとしたスタイルに赤いドレスが映える。長い黒髪が演奏につれてサラサラと美しく揺れる。曲を奏でる表情は真剣だが、トークの合間に見せる笑顔はまだあどけなく愛らしい。

演奏会の合間のトークショーで、司会者に、これまで辛いことは?と問われると「辛いと思ったことは無かった。好きで始めたので嫌な事は無い」と言い切った。

遠い昔?の中学生時代まで、私もピアニストを目指していた。

時間のほとんどをピアノの練習につぎ込むのは、上達している間は苦にならないが、思うように弾けないときは自己嫌悪に陥り、そのうち自分の才能の壁にぶち当たる。特に運指(速度を伴う指使い)は苦手だった。親の転勤や高校受験もあって音楽の道はフェイドアウトした。

でも、20歳のアリスは、好きだから辛かったことは無いと。。。

どんな天才であれ、日々の練習を怠ると指はなまってゆく。これほどの技術を高めるためにどれほどの練習を重ね、強い精神力を維持しなければならないのか分かるだけに、胸が熱くなった。本当にピアノが好きなんだ…。

これからの目標について

「末永く音楽に向き合いたい」と将来を見据えた答えを返たアリス。

「彗星のように、いっときだけ輝いて消えてしまうような存在でありたくない。いつまでも自分の音楽を演奏し、80歳になっても音楽に関わっていたい」

…今まさに脚光を浴びて演奏家としての花道を歩んでいる彼女は、現在の栄光に甘んじず、地道に音楽活動を続ける気持ちも堅めているのだ。

類まれなる才能と、恵まれた容姿、そして若さゆえの勢い。スター性も兼ね備えたアリスは、おそらくクラッシックの演奏以外にも活躍の場が広がるに違いない。さまざまなステージでの経験や新たな出会い、あるいは初めて挫折や壁にぶち当たることにより、これから人として成長した時、彼女の音楽はどのように変化してゆくのだろうか。今のテクニックを礎にして、みずみずしくほとばしるような演奏をさらに研ぎ澄ましてゆくのか、大河のようなたゆたうものになってゆくのか…。これからの成熟は想像できないだけに、本当に楽しみだ。

アリスのリサイタルの後、生業について自問自答をした。

人が生業を選ぶ時、何を一番重要視するのだろうか。

もちろん生活するための糧を創り出すことは大切だし、社会とのつながりや社会貢献の目的もあるだろう。

「それが好きだから」との理由で職業を選び、願い通りの仕事に就けたからには、生涯現役であるために自己研鑽を続けるべきだし、プロフェッショナルな仕事であればあるほど、途中で挫折した人たちの夢を肩代わりしていることも忘れてはならないと思う。

 好きだからこそ頑張れる。

 好きだからこそもっといいものを創り、送り出したい。

アリスの「末永く音楽に向き合いたい」の「音楽」という文字を 私は

「ジャーナリズム」に置き換えて

自分の選んだ生業を全うしたい。

**アリス=紗良・オット オフィシャル・ホームページ**

(演奏予定やプロモーション映像を掲載 日・英・独語:当ブログへの掲載許可は後援会から取得済み)

http://www.alice-sara-ott.com/sites/japanese/home.html

(8月11日曲目修正 写真はアリスのサイン入りCD

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